「Too far away」

水越恵子
アルバム:「Aquarius(アクエリアス)1994年5月25日
シングル:1986年5月1日

この歌との出会いは有線放送でした。ラーメン店時代、僕は店舗に有線を導入していたのですが、ある日の休憩中に突然この歌が流れてきました。ゆっくりとしたメロディーに本当にシンプルな歌詞。「愛」というものを純粋に歌い上げた歌詞で、その歌詞にピッタリなメロディー。心に真っすぐに入ってきました。

 

おそらく邪な心の持ち主の人からしますと、この歌詞はあまりに純粋すぎて嘘っぽく感じるかもしれません。中には、蕁麻疹が出てきそうな人もいるかもしれません。「愛」とはそんなに単純なものではなくて、もっと複雑でいろいろな思いや考えが絡み合いグジャグジャになったもので、ときには損得計算が伴うこともあります。そうしたカオスであるはずの愛を純粋に描いた「Too far away」に賛同できない人がいてもおかしくはありません。

 

しかし、僕のような純粋な人間(^_-)-☆にしてみますと、そうしたいろいろな要素、ときには悪い要素も含んでいるかもしれませんが、そうした愛だからこそ、素朴で純粋にとらえるのが真の意味で究極の捉え方だと思います。初めて聴いたとき、もちろん僕は題名を知りませんでした。もし、その1回だけで終わっていたなら、僕はその歌の題名を知ることもできなかったかもしれません。しかし、当時その歌は人気のある歌だったようで、その後、たびたび流れてきました。

 

そうしたある日、僕は題名を知りたくてたまらなくなり、ついに有線に問い合わせました。

「あのぉ、今流れている歌のタイトルを知りたいんですけど…」。

担当の方が教えてくれたのが「Too far away」でした。

この歌は、午後2時頃のお昼の忙しさが一段落したときに聴くのが一番心に響きます。そんなある日、この歌が流れてきたのですが、前奏がいつもと違うような感じがしていました。そして、流れてきた歌声を聴いて驚きです。なんと女性の声だったのです。しかも、こう言っては失礼ですが、それまで聴いていた歌声よりも感動が高まったのです。

 

実は、僕が最初に聴いたのは谷村新司さんの歌声でした。そして、あとから聴いた「Too far away」は水越恵子さんの歌声でした。そうなのです。この歌は幾人かの人がカバーしていたのでした。そんな中でも水越恵子さんの歌声が図抜けてこの歌にピッタリとはまっているように感じました。

 

のちになにかの記事で読んだところによりますと、谷村さんは水越さんの歌を聴いて「自分もカバーすることにした」そうです。それ以来、僕はずっと水越さんの「Too far away」を聴いているのですが、数年前自分が思い違いをしていることを知りました。

 

僕の中では水越さんはシンガーソングライターと思っていました。ですので、この歌も水越さんの作詞作曲で、その歌を谷村さんがカバーした、と思い込んでいました。しかし、これもネット世界、YouTube の功績ですが、水越さんの「Too far away」を検索しているときに、たまたま伊藤薫さんという方がこの歌の作詞作曲者であることを知りました。

 

伊藤薫さんという方は、1972年にフォーク歌手としてデビューをしたあと、1976年より楽曲提供の道に進んでいます。たくさんの有名な方に歌を提供しているのですが、一番有名なのは欧陽菲菲の「ラヴ・イズ・オーヴァー」でしょうか。この歌も純粋なラブな歌ですが、伊藤さんはこういう歌が得意なようです。

 

提供した歌手の方々をみますと欧陽菲菲さんのほかに杏里さん、石川さゆりさん、石川ひとみさん、今バラエティーで引っ張りだこの梅沢富美男さん、小柳ルミ子さん、桜田淳子さん、高橋由美子さん、天童よしみさん、といった錚々たる名前が出てきます。おそらく業界ではかなり有名な方だったのしょう。

 

「Too far away」はいろいろな方がカバーしていますので時系列で整理しますと、1979年に水越さんが「アクエリアス」というアルバムの中で発表します。その後1986年にシングルで発売し、それを聴いた谷村さんが1988年に「Far away」という題名で発表しています。発表時期で言いますと、水越さんの1970年が最初なのですが、ヒットはしていません。また、1988年にシングルで発表したときも同様です。この歌に注目が集まったのは谷村さんがカバーしたことがきっかけです。

 

人間の運命も不思議ですが、楽曲の運命も不思議です。これほどの名曲でありながらタイミングと言いますか、きっかけがなければ売れないのです。ちなみに、YouTubeでは現在(2021年4月)水越恵子さんの再生回数が約776.2万回で、谷村さんは約22.8万回となっています。YouTubeには同じ歌をアップしているほかのチャンネルもありますので、このほかにも再生されていますが、そうしたことを総合的に鑑みても水越さんの歌が人気を集めているようです。

 

本当に不思議ですよねぇ。水越さんの「Too far away」は最初に発表されたとき、どうして売れなかったのでしょう。めぐり合わせと言ってしまえば簡単ですが、人間の及ぼせる力ってたかが知れていますよねぇ。

 

また、次回。

 

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