MONEY

歌:浜田省吾
1984年10月21日に発表
オリジナル・バージョンはアルバム『DOWN BY THE MAINSTREET』に収録
シングルとして発売されていない

 

今回は先々週の予告通り浜田省吾さんの楽曲を取り上げます。いつも書いていますように、僕が好きになる歌に出会うのは、その歌がヒットしたり注目されたりした時期とはかなりずれているのですが、この歌もまさにかなりあとになってから知った歌です。

初めてこの歌に出会ったのはコロッケ店を営んでいたときです。毎日お昼休みは午後の1時~2時にとっていたのですが、お店の裏の部屋でお昼ごはんを食べながらラジオを聴くのが日課になっていました。僕は本当に子供の頃からラジオは「TBS」と決まっているのですが、どうしてそのようになってしまったのかは全く記憶にございません。

気がついたら「TBSしか聴かない体質」になっていました。僕をそのような体質に導いた一番の要因はTBSアナウンサーの大沢悠里さんの存在です。実際はあまり聴いたことはないのですが、夕方に放送されていたラジオ番組で大沢さんの存在を知り、それから午前の次回帯に移ってからの「大沢悠里のゆうゆうワイド」という番組で完璧にはまりました。特に、金曜日に放送されていた「お色気大賞」はとても好きなコーナーでした。

お色気大賞」という名前から想像できると思いますが、一般の人の体験談を募集しそれを紹介するコーナーです。「色気」とつくだけに内容がエロいのでやり方をひとつ間違えますとかなりドギツイ内容になるのですが、大沢さんの絶妙な語り口で卑猥になり過ぎることがなく、見事に楽しいエッチ話に落とし込んでいます。相手を務めます「さこみちよ」さんの存在も大きいのですが、ふたりでかなりスケベな話を楽しい思い出話に昇華させています。

大沢さんは持って生まれた素敵な声の持ち主で、一時期テレビに進出したこともありましたが、すぐにラジオ中心の活動に戻っていきました。テレビよりもラジオのほうが自由度が高いイメージがありますが、大沢さんには性格的にラジオの方が似合っていたように思います。

ちょうどこの時期にはTBSに林 美雄さんというアナウンサーもいたのですが、おしゃべりの雰囲気とか外見も少しですが大沢さんに似ている方でした。林さんは深夜のDJとしても人気を博していたのですが、残念ながら2002年にお亡くなりになっています。

 

話をコロッケ店時代のラジオ番組に戻します。

お昼休憩の時間に毎日聴いていたのが「小島慶子 キラ☆キラ」という番組です。現在、その時間は赤江珠緒さんがメインの「たまむすび」という番組を放送していますが、「たまむすび」がはじまる前に放送されていた番組です。

当時小島さんは「ラジオの女王」などと人気を博していましたが、性格的に拘りが強いといいますか頑なところがあり、番組を進行するうえで制作側と対立するようになり、結局降板してしまいます。ちょうど最終回の日は、大麻で逮捕されたあのピエール滝さんがパートナーを務めていたのですが、番組の最後に小島さんが自らの思いを語ったあとピエールさんに話を振ったとき、ピエールさんが小島さんに賛同というよりも“ちょっと違和感”といった対応をしたのが強く印象に残っています。

それはともかく僕がコロッケ店を営んでいたときは「小島慶子 キラ☆キラ」が放送されていました。この番組は各曜日ごとにパートナーが変わるのですが、月曜日はビビる 大木さんが務めていました。その大木さんが“一番好きな歌”として紹介していたのが今回紹介している「MONEY」です。僕はこのときに「MONEY」を知ったのですが、そのときの興奮気味に話す大木さんの声が忘れられません。

「MONEY」はメロディー的にはロック調の激しい歌なのですが、僕が心を打たれたのは歌詞の内容です。大木さんも歌詞に惹かれたと話していましたが、ストーリーの展開が素晴らしいです。先々週紹介しました「丘の上の愛」もストーリー展開が感動的なのですが、この歌も見事です。基本的に、ハマショーさんは歌詞が魅力的なのですが、まるで小説を読んでいるかのような気持ちにさせてくれます。

僕は全くの素人ですが、ハマショーさんの詞は作詞を勉強している人の勉強になるのではないでしょうか。短い言葉の中で、いろいろな情報や情景を思い浮かべさせる術が詰め込まれています。例えば、出だしの

♪この町のメインストリート 僅か数百メートル
♪さびれた映画館と バーが5、6軒
♪ハイスクール出た奴等は 次の朝、バックをかかえて出ていく

たったこれだけの歌詞ですが、主人公の置かれた状況や情景が思い浮かびます。人生はお金ですべてが決まり、お金こそ大切で、自分は成功してお金を稼いでやる、という強い意志が感じられる歌です。なんという歌詞のセンスでしょう。

歌詞の後半には

♪純白のメルセデス
♪プール付きのマンション
♪最高の女と ベッドでドン・ペリニヨン

という歌詞が出てくるのですが、この言葉だけでセレブ感が十分に伝わってきます。驚くべきことに、この歌詞が書かれたのは今からなんと約40年前ですが、全く色あせていないことに驚かずにはいられません。また、歌詞の真ん中あたりには男女が愛の営みを行っている光景を綴った歌詞があるのですが、その中には

♪愛してる…愛してる… もっともっと…

と女性が発すると思われる歌詞があります。コンサートではこの部分を女性観客に歌わせるパフォーマンスが恒例になっているそうですが、たまたまライブ版の音声を聞いたときに、女性ファンが拳を上げてこの部分を大声で歌っているさまには思わず笑ってしまいました。

この歌が発表された数年後に日本はバブルに突入するのですが、このときすでにバブルの予兆があったのかもしれません。というよりも「お金こそすべて」という発想が世の中に広がりつつある光景にハマショーさんは違和感を感じずにはいられなかったのでしょう。

一見、成り上がりを夢見ているふうで、実際はそうした風潮を批判しているハマショーさんの歌詞でした。

それでは、また。

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