サルビアの花

もとまろ
作詞:相沢靖子、作曲:早川よしお

以前水越恵子さんの「too far away」という歌を紹介したことがありますが、この「サルビアの花」も同じ系統の歌と思っています。「同じ系統」とは「素敵なメロディー」を作るけど、歌うのはほかの人のほうがよい」という系統です。

この歌を僕に教えてくれたのは高校生時代のE君という友だちです。E君は高校生になって初めて仲良くなった友だちです。誰でも経験していると思いますが、高校という新しい環境ではに不安になるのが当然です。そうしたときに親しくなるのは「席が近い人」というのが定番です。E君は僕の前の席に座っていました。

身長は僕とほぼ同じくらいですが、少し痩せぎすで高校生にしては長髪でちょっとおしゃれな感じの人でした。当時はほとんど意識していなかったというか、わかっていませんでしたが、僕よりもかなりお金持ちの家の高校生だったように思います。

E君は関西弁のちょっと早口で豪快に笑う人で、当時関西で若手落語家として人気があった「桂きん枝さん」に似ていました。仲良くなりましたので自然と一緒に帰るようになり、細かいことまでは憶えていませんが、とにかく二人でよく笑いながら歩いていた思い出があります。なにが楽しかったのかわかりませんが、とにかくいつも二人して笑っていました。

ある日、クラスのO君というクラスメートが突然授業中に教室を飛び出し、どこかに行ってしまったことがあります。今でいう発達障害だったように思いますが、突然大声を出したりなど普段から突飛な行動をする人でした。そのO君が突然教室を飛び出しました。先生もとても驚いてしまい、僕とE君に向かって「ふたりで追いかけて」と要請してきました。僕たち二人を指名したのは、普段から仲良くしているのを見ていたからだと思います。それくらい僕とE君はいつも一緒にいました。

そんなときにE君が僕に教えてくれたのが「サルビアの花」という歌でした。「とってもいい歌だから聞いてよ」と感動した声で勧めてきました。当時はラジオで歌情報を知るのが一般的だったように思いますが、E君に教えてもらって聞いた僕もとても感動した記憶があります。なにが感動したって、それは

♪とびらを開けて 出てきた君は
♪偽りの花嫁
♪ほほをこわばらせ 僕をチラッと見た

この歌詞ですよ。こんな感動する歌詞があるでしょうか。彼氏を捨ててお金持ちと結婚した女なんてひどい女に決まっているじゃぁ、あ~りませんか!以前紹介したハマショーさんの「丘の上の愛」の女性のパターンです。

しかし、今になって思いますと、高校生という純朴な時期にこの歌詞が心に刺さったのもなんかすごいなぁ、と思う次第でございます。まだ恋愛経験もない無垢な少年、いえ青年、いえいえその中間に位置していた時期に、このような歌詞に反応していた自分が恥ずかしい…。

それはともかく、恋を知らない当時から僕は女性に純粋性を求めていたことがわかります。問題は、僕が理想としていた純粋な女性と結婚できたか、否か、ですが、それは秘密ということで何卒よろしくお願い申し上げます。

それほど仲がよかった僕たち二人ですが、僕は次第に身体がなまってきたことを感じるようになっていました。元々運動好きな肉体ですので、ただE君と一緒に帰るだけの生活に物足りなさを感じるようになってきました。身体が運動をしたくてしたくてウズウズしてきていたのです。

細かいことは大分前ですが、コラムで書いていますのでそちらを読んでいただくとして、結局、僕は学校一練習が厳しい運動部に入り、練習に明け暮れることになります。そうして次第に、E君との親友関係も薄くなっていきました。僕はどっぷりと練習に浸かる高校生活を送ったのですが、この「サルビアの花」を聴くたびにE君を思い出しています。

また、次回。

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