ディープ・パープル

1981年3月21日発売
作詞:ちあき哲也 作曲:五十嵐浩晃
歌:五十嵐浩晃

五十嵐さんは「ペガサスの朝」が大ヒットして有名になったのですが、その次に出したシングルがこの「ディープ・パープル」でした。前から書いているように、僕が好きになる歌は大ヒットではなく中ヒット・小ヒットする歌がほとんどなのですが、この歌も例外ではありません。

「ペガサスの朝」はチョコレート会社のCMソングに使われたことで売れた、と僕は思っているのですが、僕からしますと、この歌のほうが断然よい歌です。なので大ヒットはしませんでしたが、それは世の中が悪いのであって、僕や五十嵐さんが悪いわけではありません。(^_-)-☆

実は、音楽業界にはある慣習というか不文律と言ってもいいように思いますが、それはある歌がヒットしたときは、そのヒットした歌と似たような傾向の歌を続けるという不文律です。「ペガサスの朝」は軽快なポップ調の歌でしたので、あと一曲または二曲くらいは同じ感じの歌を出すのが業界の慣習だったはずです。

今や押しも押されぬビッグバンドになっているサザンオールスターズですが、そのサザンでさえ、デビュー曲の「勝手にシンドバッド」がヒットしたあと2作目に似たような調子の「気分しだいで責めないで」を出しています。そして次の曲として、レコード会社からは同じ調子の歌をもう1曲と言われていたそうです。しかし、サザンはこれまでの歌とは違う調子の歌「いとしのエリー」を発表しました。この歌がヒットしたからこそ、一発屋で終わらなかったのだと思います。

このような業界の傾向がある中で、五十嵐さんが「ペガサスの朝」がヒットしたあとに、前作とは全く曲調が違う歌を発表したのが不思議な気がしないでもありません。僕的は、いい歌だと思いますが、業界の不文律に逆らうような歌を発表したのは、五十嵐さんの考えなのか、レコード会社の考えなのか気になるところです。

僕としては、どうしてこの歌が大ヒットしなかったのか、不思議なのですが、メロディーと作詞がピッタリと重なりあっています。実は、作詞も五十嵐さんだと思っていたのですが、ちあき哲也さんという方でした。この歌詞、本当に素敵です。ゆったりとしたメロディーと相まって光景が頭に思い浮かびます。この歌を聴いた人は、それぞれに自分なりの光景を思い浮かべている、と思っているのですが、おそらく「ちあき哲也」さんはどこかで似たような経験、光景を見たのではないでしょうか。

♪それは誰のせいでもなくて あなたが男で
♪きっと誰のせいでもなくて わたしが女で

そうですよね。男女がうまくいかなくなるときって、どっちが悪いということではなくて、それぞれが「男」であり「女」だからなのです。今はジュエンダーフリーなどと言われていますので、それを当てはめるなら

♪それは誰のせいでもなくて あなたがあなたで
♪それは誰のせいでもなくて あなたがわたしでなくて

と言い換えることもできるかもしれません。つまりは、人間は個人個人が違う個性を持っているからです。今風にいうなら、まさにダイバーシティでしょうか。結局は、自分と他人は違うということを認めることが大前提です。それを認めることで、「誰のせいでもない」とうなづくことにつながるのです。…たぶん。

♪どうしてむくわれないものが好き
♪つく傷はいつもひと色そしてこんな旅を

「むくわれないものが好き」ってとこが、僕は好きです。世の中自分の思い通りになんてなることのほうが少ないんだから、最初からそういうものが好きっていう発想がいいですよね。この歌詞を書いた「ちあき哲也」さんは、ほかにどんな歌詞を作ってるのかぁって調べたら、僕が知っているのでは少年隊の「仮面舞踏会」を作詞していました。この歌も普通とはちょっと感じが違った内容でいいです。この方のセンスのよさが伝わってきます。

五十嵐浩晃さんっていいますと、アフロヘアーが特徴なのですが、デビューへとつながったオーディションで一緒に合格した人として村下孝蔵さんやHOUND DOG、堀江淳さんがいました。それぞれ懐かしい名前ですが、村下孝蔵さんにはここで紹介したいような歌がいくつかあるのでいつか紹介しようと思っています。

HOUND DOGのボーカル大友康平さんは現在では歌手というよりもバラエティーとかドラマでの俳優として活躍している姿を見かけるほうが多いですが、「ff フォルテシモ」の大ヒットで若者の心を掴んでいた頃、僕はちょうどタクシードライバーをしていました。ある日、渋谷から六本木まで乗せた30代半ばくらいの男性が「俺、HOUND DOGのマネージャーなんだ」って話していたんですけど、本当だったのかなぁ。

それではまた、次回。

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