椎の実のママへ

作詩・作曲・編曲:さだまさし
歌:さだまさし

ギターだけが伴奏のなが~い歌(約9分)なのですが、物語を聞いているようで心の中に染み入ってきます。「物語を聞いているよう」なのですから、ひとりの女性の人生を綴っている楽曲です。「NHK朝ドラと同じくらい」と言いますと言い過ぎですが、朝ドラに負けないくらいのストーリー展開があります。ひとりの女性の人生ストーリーですので、同じメロディーの連続でも飽きるということは全くなく、それどころか話が進むにつれてますますその先の話を聞きたくなる歌詞になっています。

出だしは

♪漢口(ハンカオ)の春は 大使館の柳の青
♪それから池に降る その花の白
(後年、記憶違いということで「大使館」を「領事館」に変えています。)

なのですが、もちろん初めて聴いたとき「ハンカオ」が「漢口」だとは全く知りませんでした。ただ色の対照がやけに心に残り、そしてメロディのシンプルさに一瞬で心を奪われました。僕が言うまでもありませんが、さださんはメロディもですが、歌詞はとりわけ天才です。これだけの物語になっている歌詞をメロディに乗せるのですから、天才と言わずなんと言いましょう。

40年以上前のことですが、新卒でスーパーに勤めていた頃、隣の売り場の主任は顔立ちがさだまさしさんに似ている人でした。「似ている」だけではなくファンでもあったのですが、ある日さださんのコンサートに行ってきたときの話をしてくれました。さださんは身体の線が細いので余計にそう思わせるのでしょうが、レコードで聴くさださんは「歌声の線が細く、声量も弱い」という印象を持っていました。

その主任も僕と同じ気持ちだったらしいのですが、コンサートで生に聴いた歌声と声量はそれまでの印象を全くもって覆すものだったそうです。つまり、コンサートで聴くさださんの声は「太く、そして大きな声量」に驚かされた、と話していました。

さださんは楽曲も素晴らしいのですが、それと同じくらい、もしかしたら楽曲以上に「コンサートでのトーク」が面白いそうです。そうした記事をなにかで読んだことがあるのですが、僕の記憶では「コンサートのトーク」だけを集めたCDが発売されていたように覚えていました。

そこで今回取り上げるに際して検索したところ、記憶違いではなく実際に発売されていました。すごいですよね。アーティストの中には「トーク」が苦手でできるだけトークをしないで済むような構成にしている人もいる中で、トークだけのCDが作られるほど面白い話ができるなんてすばらしいです。まるで落語家とかピン芸人のようで、さださんが天才たるゆえんがここにありそうです。

今の若い人たちが好むコンサートはペンライトを掲げ、拳を振り上げ、そして跳ね、出演者と一緒に身体を動かして盛り上がる形式が多いですが、さださんのコンサートはそうしたものとは一線を画し「歌を聴く」ためのコンサートになっています。出演者と一緒に身体を動かし一体感を感じられるコンサートも魅力ですが、アーティストの歌を生で聴くのが本当のコンサートだと思ってしまうのは昭和オジサンのノスタルジーでしょうか。

でも、本当に正直に若い人に嫌われるのを覚悟で告白しますと、アーティストと一緒に身体を動かし燃え上るのはストレス発散には向いているでしょうが、歌を聴く本当の形ではないように思ってしまいます。例えば、オーケストラとかピアノのコンサートでは観客の方々は演奏者やほかの観客の邪魔をしないように静かに演奏に耳を傾けています。そうした会場の光景こそがコンサートです。

こんなこと書いたら若い人から顰蹙を買うかなぁ…。でも、コンサートなんだから。

そんなことはさておき、さださんて、若い人たちからももっともっと評価されてもいいよなぁって思っています。

是非聴いてください。
https://www.youtube.com/watch?v=sM2bqgV6Tyg

それでは、また。

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