チェインギャング

THE BLUE HEARTSの通算3枚目のシングル
「キスしてほしい(トゥー・トゥー・トゥー)」のB面
7インチレコード(1987年)8cmCD(1987年)

 

この歌が発表された頃、僕はほとんど流行っていた歌の記憶がありません。理由はラーメン店を開業したばかりの頃だからです。歌を聴く余裕が全くありませんでした。ですので、80年代後半から90年代にヒットした歌はほとんど知らないのです。

 

そういう理由で、THE BLUE HEARTSについてもこのバンドが人気絶頂だった頃を知りません。僕がTHE BLUE HEARTSについて知っていたのは「リンダ リンダ」という歌が印象的だったからです。しかも、この歌を知ったのもTHE BLUE HEARTSで知ったのではなく、甲本さんの物まねをしたスマップの中居くんを見たことでした。

 

「ドブネズミ」という言葉からはじまる歌詞も刺激的でしたが、それよりなにより甲本さんの歌うときの派手なパフォーマンスが注目されていました。ですので、最初の頃はロックバンドというよりも企画物バンドという印象を持っていました。

 

THE BLUE HEARTSの凄さを知ったのはそのずっとあとで、自動車のテレビCMで「日曜日よりの使者」が流れてきて、なんとなく聞き覚えがあるというか、心にスッと入ってくるメロディと歌詞が心地よかったからです。

 

それから、遅まきながらTHE BLUE HEARTSYouTubeで見る機会が多くなり、次第に単なる企画物バンド、もしくはロックバンドではなく、もっと奥深いバンドということを知りました。特に、歌詞の素晴らしさには感動せずにはいられませんでした。甲本さんはバンドの顔ですので、注目されるのは当然ですが、「チェインギャング」を作詞作曲している真島昌利さんの才能にも驚かされました。

 

おそらくこの歌を作ったのは20代だと思いますが、そんな若い時にこんな胸中、考えを持っていたことに驚愕です。僕が20代の頃はこんな難しい哲学的な考えをすることなどありませんでした。真島さんは、間違いなくとても感性が敏感で鋭い人で、哲学的な人です。

 

この歌の歌詞は、言い過ぎと批判されることを覚悟して書きますと、精神的にかなり追い込まれていたときではないでしょうか。そうした精神状態でなければ、出てこない言葉が連なっています。

♪仮面をつけて生きるのは 息苦しくてしょうがない

♪世界が歪んでいるのは 僕のしわざかもしれない

♪一人ぼっちがこわいから ハンパに成長してきた

これらの歌詞に、青春の焦り、動揺、挫折を感じる人は多いでしょう。繰り返しますが、20代の頃に書いた歌詞とは思えません。

 

真島さんには「青空」という歌もありますが、この歌は不平等で不公平な世の中を風刺した歌詞となっています。計算高い人や優越感を持ちたがるハンパな人がたくさんいる世の中を憂いています。現在世界的に問題になっている人種差別問題を30年も前に歌っているのです。こんな素晴らしい歌があるでしょうか。

 

かというと、真島さんには「アンダルシアに憧れて」という、まるでギャング映画の一シーンを描いたような歌があります。ハンフリー・ボガードかアル・パシーノあたりが出てきそうな歌詞の内容ですが、こうした作詞もできるところがまた、真島さんの引き出しの多さを表しています。

 

THE BLUE HEARTSのファンはもちろんですが、今の50才前後の人たちにとっては超有名なバンドであり、数々の名曲を発表していた神バンドなのだと思います。そうしたことを一番感じるのは解散してかなり年月が経つにもかかわらず、いろいろなCMでTHE BLUE HEARTSさんの歌が使われていることです。「どれだけ好かれていたんだ!」と思わずにはいられません。

 

THE BLUE HEARTSのメインは甲本さんですが、その相方に真島さんという素晴らしい才能の持ち主がいたことが、このバンドの凄さを最も象徴しているように思います。そういえば、BOOWY(ボウイ)にもメインを張る氷室京介の相方に布袋寅泰さんという天才がいたっけ…。

 

それでは、また次回。

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