イメージの詩

作詞作曲:吉田拓郎
1970年6月1日にエレックレコードから発売

拓郎さんの歌はこれまでにも幾つか紹介していましたので、この歌もとっくに取り上げていると思っていました。ところが、豈図らんや(あにはからんや)過去の投稿を調べたところ見つかりませんでした。前にも書きましたが、僕は拓郎さんの「熱烈なファン」というほどでもありません。ただ好きな歌がたまたま拓郎さんの歌だったというだけのファンですが、この歌に出会ったのもリリースしてからかなりあとになってからです。「あとになってから出会った」曲で、僕に最も最近で最も強いインパクトを与えたのは「外は白い雪の夜」ですが、この楽曲はは2年前に書いています。

それに対して今回の「イメージの詩」は楽曲の存在自体は、拓路さんを知った当初から知っていました。ですが、内容というかメロディーというか、とにかくあまり詳しくは知りませんでした。というか聴いたこともなかったように思います。

そのような「イメージの詩」ですが、たまたま聴く機会があり、「おおー、名曲」と感じた次第です。以前と言っても20数年前のことですが、ラジオ番組かなにかで拓郎さんが話していたエピソードで印象に残っている話があります。拓郎さんがデビューしてから数年経ったあとに、フォークシンガーが集まるフェスに出演したときの苦い思い出です。当時、拓郎さんはヒット曲を出しそれなりに売れていたのですが、そのフェスで拓郎さん出ていった途端に観客から「帰れ!コール」のバッシングを受けたそうです。

その話が記憶に残っていたのですが、その「帰れ!コール」の理由を間違えて記憶していました。かつて拓郎さんは「婦女暴行」で逮捕されたことがあります。結局この逮捕は告発者の虚偽だったことがあとから判明したのですが、やはりフォークの頂点にいる歌手の逮捕劇でしたのでマスコミ等でも大きく報じられました。しかし、「不起訴」というか虚偽告発だったことはあまり報じられないまま風化していったようです。これは今も昔も変わらないのですが、逮捕時には大きく報じながら、そのあとのことは世間も含めてあまり関心を持たなくなってしまいます。

僕にしても「逮捕」の記憶が強く残っていましたので、フェスでの「帰れ!コール」はその「婦女暴行での逮捕」が理由だと思っていました。しかし、実際はそうではなく「フォーク出身でありながら『売れた』こと」に対してでした。当時拓郎さんは「結婚しようよ」が爆発的に売れたことで、いわゆる芸能界で有名になっていたのですが、ファンの方々はそうした成功を受け入れることができなかったようです。フォークの昔ながらのファンの方たちは「フォーク歌手が売れるのは、フォーク界に対する背信行為」と考えていたのかもしれません。

僕からしますと、いくらかは「妬み」の感情も入っていたように想像しますが、それをものともせず拓郎さんは成功の階段を一気に駆け上って行きました。その拓郎さんのデビュー曲が「イメージの詩」でした。それを知ったとき、僕は「その意外性」に驚きました。なぜなら、この歌が歌詞の内容的に「メッセージソング」だったからです。

拓郎さんの後輩に浜田省吾さん(以下:ハマショーさん)という方がいるのですが、ハマショーさんのデビュー曲は「生まれたところを遠く離れて」という楽曲です。テンポがゆっくりでキリストを思わせるバラード調の、ハマショーさんの中で僕が好きな歌ベスト3に入る名曲です。ハマショーさんはデビュー前にこの歌の感想を拓郎さんに聞きに行ったのですが、そのときに拓郎さんの返答は「暗いから売れねぇぞ」というものでした。(うろ覚えなので正確性には欠けるかもしれません)

拓郎さんが一気にメジャーになったのは「結婚しようよ」ですが、この楽曲はデビュー後2年くらい経ったあとです。それまでもそこそこは売れていたようですが、ビッグヒットには至っていませんでした。つまり拓郎さんのデビュー曲「イメージの詩」もメッセージ性が強すぎたことが理由かはわかりませんが、ビッグヒットには至っていなかったのです。

それを経験していた拓郎さんが後輩のハマショーさんに「暗いから売れねぇぞ」と言っていたところがとても興味深く感じました。これまでになんども書いていますが、僕が心底から好きになる歌は絶対に「ビッグヒットをしない」のですが、「イメージの詩」も「生まれたところを遠く離れて」も同じ道を歩んでいます。

♪これこそはと 信じれるものが
♪この世にあるだろうか
♪信じるものが あったとしても
♪信じない素振り

♪悲しい涙を流している人は
♪きれいなものでしょうね
♪涙をこらえて 笑っている人は
♪きれいなものでしょうね

歌詞の解説によりますと、この当時はあれほど激しかった学生運動が下火になった頃で、時代の変化を写し取っているそうです。この楽曲の歌詞で最もいろいろなところで使われている部分が

♪古い船には新しい水夫が
♪乗り込んで行くだろう
♪古い船をいま 動かせるのは
♪古い水夫じゃないだろう

です。かくいう僕も文章を書くときに、度々この部分を使っています。世代交代の必要性を表したいときに最もしっくりくる歌詞だと思っています。この歌は普遍性のあるメッセージソングと思っているのですが、言い過ぎでしょうか。

その拓郎さんも引退をしましたが、拓郎さんの引退時のコメントで強く印象に残っている言葉があります。

「ファンの人は昔の歌を求めるが、自分は常に新しい歌を歌いたいと思っている。そのギャップが辛かった」

拓郎さんは引退に際して、仰々しい引退興行もコメントも残していませんが、いかにも拓郎さんらしくて、そういうところも好きです。

それでは、また。

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