「長い間」

1996年にインディーズシングルとして発売
作詞・作曲:玉城千春 歌:kiroro

 

先週、沖縄出身の喜納昌吉&チャンプルーズさんの「花」を紹介しましたが、今週も沖縄出身の「kiroro」さんの楽曲です。このデュオは玉城千春さんと金城綾乃さんが高校時代に知り合ったことが縁で結成されたそうです。

 

歌っているのは玉城さんですが、玉城さんは松田聖子さんに歌声が似ていると言われていました。また歌も抜群に上手いのですが、楽譜や楽器などはダメだそうで、ピアノが弾ける玉城さんがそれを代わりにやったことで結成したそうです。

 

この二人を見ていますと、音楽で身を立てようと地方から東京に出てきた人たちの一般的な移り変わりを感じることができます。漫才師にも当てはまるのですが、二人のうち一人だけに世間の注目が集まることがありますと、そうしたときに、二人の関係に微妙にすきま風が吹くことがあります。

 

マスコミといいますか、業界の人たちは常に人気のある人に「乗っかろう」という習性があります。俗にいう「一発屋」という人たちは、業界の人たちから使い倒されて消えていく人ですが、二人組の場合も片方だけが注目を集めたり人気が出てしまいますと、二人組であるにもかかわらず、残りの一人を蔑ろにすることがままあります。

 

そうした状況になったときに、注目を集めた人または人気が沸騰した人が個人の人気にうぬぼれることなく、二人組で仕事を受けようという優しい心づもりのある二人組はその後も成功するように思います。先週、博多華丸大吉さんのコラムを書きましたが、まさに華大さんはそうした理想的な姿です。

 

しかし、中には自分一人だけ階段を上ろうとばかりに相方を置き去りにしてさっさと自分だけいい思いをしようと考える人もいます。そこに軋轢が生まれ、そうしたグループは違う道を歩むようになりますが、反対にそうした状況のときでも二人で力を合わせて活動するグループはその後の関係も続いていけるものです。

 

ここから先は僕の全くの想像の世界ですが、kiroroのお二は地元で活動している間は、玉城さんは楽譜も書けませんし読めませんし、楽器も弾くことができませんので、そうした部分を金城さんが引き受けることでお互いの関係がスムーズな状況でいられました。もしかしたなら、玉城さんは楽譜も読めませんので、金城さんが上で歌うだけの玉城さんは下の関係だったかもしれません。

 

ですが、歌がヒットして上京してきますと、環境は一気に変わってきます。上京したあとの環境では楽譜など読めなくても問題なく、ピアノを弾ける人もいくらでもいます。そうした環境では、それまで玉城さんの貴重な相棒であった金城さんは存在する意味がなくなる場合もあったのではないでしょうか。

 

なにしろ作詞作曲するのは玉城さんです。金城さんは伴奏をするだけなのです。業界や周りの人が玉城さんだけを求めようとするのは容易に想像ができます。おそらく金城さんのほうが気後れするよう場面もあったのではないでしょうか。そうしたとき、二人の間に少しずつすきま風が吹いてきてギクシャクした関係になっても不思議ではありません。

 

僕にそうしたことを想像させたのは、10作目のシングル「Best Frend」です。この歌は玉城さんの金城さんへ素直な気持ちを綴った手紙です。大切な親友への心のこもった思いを吐露した手紙です。どんな人も成長するに従いつき合っていく人が変わってくるものです。ある意味、それは仕方のない面もありますが、青春時代の親友を一生涯大切にしようという生き方があってもしかるべきです。

 

kiroroのこの歌を聴くと、いつも本当の親友がいることの素晴らしさを感じずにはいられません。

 

それではまた。

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