1978年3月21日発売
作詞:松本隆 作曲:筒美京平
歌:中原理恵(デビュー・シングル)
中原理恵さんで思い出すのは、この歌とフジテレビ「欽ドン!良い子悪い子普通の子」のに出演していたときのコメディアンぶりでしょうか。欽ちゃんとの丁々発止のやり取りは、かなりの頭の回転の速さがなければできない芸当です。それをこなしていたのですから、持って生まれた笑いのセンスがあったように思います。
今回書くにあたり調べて驚いたのですが、レギュラーとしては1年しか出演していなかったのですね。ものすごく面白かった印象がありましたので、もっと長期にわたって出演していたものと思っていました。
それはともかくこの歌は大ヒットしたのですが、僕のイメージとしては「乾いた歌」という感じがあります。僕がちょうど大学生時代ですが、当時の若者の風景を作詞の松本隆さんはうまく掬い取っていたように思います。作曲は筒美京平さんですが、このお二人は永遠の失恋ソング「木綿のハンカチーフ」のコンビでもあります。おそらくレコード会社はヒット間違いなしのつもりでこの二人に依頼したのでしょう。
それにしても松本さんにしろ筒美さんにしろ、これほど大衆の心を掴めるのは持って生まれた天性があるからに間違いありません。そうでなければ連続で長期間ヒット作を作れるはずがないからです。
♪午前3時の東京湾は
♪港の店でライトで揺れる
湾を「べい」と読ませるあたりは時代を切り取る作詞家の真骨頂でしょうか。当時は「なんとなくクリスタル」という若者の流行をつづった作品がヒットしていましたが、流行に敏感な若者が多かったのかもしれません。僕は、おしゃれにそれほど強い関心があったわけではありませんでしたので、少しばかり別世界の感じを持っていました。
♪午前6時の山の手通り
♪シャワーの水で涙を洗う
山の手通りというのも、なんかおしゃれな感じがしますね。僕の中で「山の手通り」といいますと、時代的にはもう少しあとになりますが、タクシーの運転手をしていたときを思い出します。僕は渋谷近辺を流していたことが多かったのですが、山の手通りをよく走った記憶があります。
冒頭で書きましたように、僕はこの歌詞からは「乾いた東京」というイメージを受けますが、若者が集う街からは煌びやかさと華やかさも感じられます。同時に、どこか冷たい雰囲気も感じられるのですが、「乾いた」と「冷たい」はどこかでつながっているように思います。
この歌を聴いていましたら、なぜかタクシー時代のことを思い出しました。僕はお酒を飲みませんので盛り場は得意ではないのですが、タクシーのお客さんを求めて盛り場には行っていました。ですので、乗車してくるお客さんを見ていますと、街の雰囲気は伝わってきていました。いつも思っていましたが、盛り場って「人間の素」が出るところなんですよねぇ。
人間の嫌なところも幾度か見せられましたので、人生勉強にはなったのかなぁ、なんて思ったりしています。
それでは、また。