「もう一つの土曜日 」

1985年5月22日に発売
浜田省吾の18枚目のシングルB面

この歌は歌詞が純愛ストーリーになっているのですが、僕からしますと昔の日活の青春映画を想像させる内容です。それこそ日活黄金期の吉田小百合さんがヒロインで浜田光夫さんが相手役の「昭和映画の匂い」がプンプンしてきます。

歌詞から僕が勝手にストーリーを作りますと、工場に勤務しているヒロインはとてもきれいな十代のかわいらしい女性です。そして、この女性を遠くから見守り心の中で慕っている男性は20代半ばといったところでしょうか。しかし、悲しいことに女性は上司と不倫しているのが社内で噂になっています。お昼休みに食堂で見かける女性はいつも寂しそうにしていました。

不倫ですから、上司には家庭があります。ですから、土曜日にしか会えないので「もう一つの土曜日」なのです。男性は不倫をしている女性に憤りを感じながらも愛してもいるのです。そのような状況を打開すべく男性は女性をドライブに誘い、愛を告白します。歌詞の最後は「受け取ってほしい、この指輪を」です。この女性には是非とも幸せになってほしい、と願うのは僕だけではないでしょう。

この女性に限らないのですが、不倫に走ってしまう女性は、そのとき世界が狭くなっていることがほとんどです。周りが見えなくなっているので不倫に陥ってしまうのです。そんな女性の心の隙間をうまくつくのが不倫に誘い込む男たちの常套手段です。この女性もそんな環境に陥っていました。ですので、上司の口車に乗せられてしまったのです。それを遠くから見つめていた男性は、悩み苦しみます。

♪君を思う時 喜びと悲しみ
♪ふたつの思いに揺れ動いている
♪君をさばこうとする その心が
♪時におれを傷つけてしまう

なんと切ない歌詞でしょう。

いじめで苦しむ人も同じような構図です。いじめで苦しんでいるとき、周りが見えなくなっています。そのときの周りが自分の人生のすべてに思えるからです。でも、世界はもっともっと広い、ちょっと環境を変わるだけで世界は全く違ったものになります。学校にしろ職場にしろ、狭い世界に閉じこもってしまっていては苦しさが増すばかりです。

あなたは自由です。自分の生きる場所は自分で決めることができます。そんなことを考えさせる歌です。浜田さんの歌にはテーマが3つあります。「純愛」と「不倫」と「人生」です。純真な人は「純愛」だけが素晴らしいと考えがちですが、浜田さんは違います。「不倫」という本来あってはならない愛も歌っています。

なぜか。

それは、人間は人間が考えるほど純粋な生き物ではないからです。過ちも犯すのが人間という前提があっての人間です。そうしたことも含めて「人生」を歌っているのが浜田さんのすごいところです。ちなみに、浜田さんは東日本大震災が起きる前から、なんと「僕と彼女と週末に」という原発の恐ろしさを歌っていました。

すごい人ですよねぇ。来週も浜田さんの歌にしよう。

また、次回。

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