1976年9月20日にリリースされたアリスの9枚目のシングル
作詞:谷村新司 作曲:堀内孝雄
今回この歌を取り上げたのは、アリスのリーダーだった谷村新司さんがお亡くなりになったからです。実は、アリスは僕がコンサートに行った唯一のアーティストです。日本武道館だったのですが、友だち4人~5人で行ったように記憶しています。確か2階席だったと思うのですが、谷村さんが「さあ、みんな立って隣の人と手をつなごう」とかなんか言っちゃって。そのとき左は親友のK君だったんですけど、右は女性だったのでちょっと緊張というか、興奮というか、とにかくそんな気持ちになったことを覚えています。
なぜ、アリスのコンサートに行ったのか、というのは全く記憶がないのですが、親友のK君がバイト仲間の人から誘われて、一緒に行ったような気がします。いつものことですが、僕はアリスのファンということでもなく、ただ当時ヒット曲を歌っているのを知っている程度でした。
アリスのリリースした曲を調べましたところ、僕が知っているヒット曲の2番目の題名がこの楽曲でした。一番目は「今はもうだれも」なのですが、ということは、僕は「今はもうだれも」のヒットでアリスの存在を知ったことになり、それからアリスを注目するようになり、この楽曲に続いたのだと思います。
しかし、タイトルを眺めて感じたのは、「今はもうだれも」あたりから「ヒット狙い」が前面に出すぎているように感じたことです。確かに、ヒットしなければアーティストとして存在価値がなくなるのは理解できますが、あまりに度が過ぎると、正直なところ、冷める気持ちはあります。特に、第1位を獲った「チャンピオン」などはサイモンとガーファンクルの「ボクサー」を真似したようであまり気分のいいものではありませんでした。
それはさておきますと、谷村さんの才能はやはり抜きんでたものがあります。僕がいうまでもありませんが、「昴」は歌詞、メロディーともに名曲ですし、「サライ」は加山雄三さんとの共作とはいえ、谷村さんの貢献度は高かったはずです。
今回取り上げました楽曲は、「ヒット狙い」というよりも自らの思いをうたい上げたという感じがして好きです。
♪悩みつづけた日々が
♪俺を見捨てた女を
♪自分の言葉に嘘は
♪つくまい人を裏切るまい
♪遠くで汽笛を聞きながら
♪何もいいことがなかったこの街で
アリスはデビュー当時全く売れなかった、という話はいろいろなところで語っていますが、そうした過去があるからこそ生まれた歌詞のように想像しています。僕は深夜放送での谷村さんと「ばんばひろふみ」さんのラジオ番組をたまに聴いていたのですが、谷村さんの助平な話とそれに馬鹿笑いをしていた「ばんば」さんの掛け合いはとても楽しいものでした。
谷村さんがお亡くなりになり、メンバーの堀内孝雄さんのインタビューは見ましたが、「ばんば」さんの悲しみも幾ばくかと想像しています。谷村さんの訃報に際して中国の報道官も触れていましたが、谷村さんは中国で教授を務めていた時期があるそうです。大分依然になにかの記事で読んだのですが、「昴」の壮大な歌詞と荘厳なメロディーは国境を超えて共感を呼んだのでしょう。
谷村さんはインターネットでトーク番組を持っていたのですが、元海援隊の武田鉄矢さんとの対談では2人の濃密な関係性に驚かされました。僕が知らないところでいろいろな人とのつながりがあったようでとても面白い番組でした。そうであるだけに今回の訃報はまだ実感がありません。
74歳はあまりに早いと思います。まだまだ元気に活躍できる方と思っていただけにショックは大きいものがありました。
悲しい。
それでは、また。