作詞:アメリカ民謡 訳詞:浅川マキ
作曲:アメリカ民謡
歌:ちあきなおみ
発売日:2003年04月23日
この歌は元々は米国のアニマルズというグループが歌ってヒットしたそうですが、その後ボブ・ディランなど多くの歌手がカバーしているそうです。僕が知ったのは“ちあきなおみ”さんがシャンソンのようにして歌っていた姿ですが、とても迫力があったのを覚えています。
その後、なんとなく記憶の片隅に残ってはいたのですが、忘れていました。それを思い出させてくれたのは、やはりyoutubeさんです。僕はよく書きますが、ネットの問題点として「自分の関心のあることにしか触れなくなる」と指摘されることがありますが、僕は全くそのように思っていません。
この歌も僕は忘れていたのですが、僕が日ごろ聴いている楽曲からyoutubeさんが推測しておすすめ欄の載せてくれており、思い出した次第です。僕は音楽に詳しくはありませんので、僕の楽曲の分類方法が合っているのかわかりませんが、ダウンタウンブギウギバンドが歌う「R&B」がとても好きです。
以前、ここで紹介しました「涙のシークレットラブ」は僕が人生で一番好きな歌です。正しいかどうかわかりませんが、この歌を僕は「R&B」と思っています。その同じ流れに「朝日のあたる家」があるのだと思いますが、実はこの歌をヒットさせたアニマルズの歌は「R&B」調ではなくフォークソング調になっています。それを日本風にアレンジしたのが“ちあきなおみ”さんでした。
ですから、アニマルズの歌と“ちあきなおみ”さんの歌では全く別物に聴こえないこともありません、。この歌のタイトル「朝日のあたる家」はアニマルズでは「刑務所」のことを指しているのですが、“ちあきなおみ”さんは日本詞にもあるように「女郎屋」になっています。
これをなにかで読んで、この訳詞をした浅川マキさんは「天才!」と思っていたのですが、元々この歌には米国でもいろいろな歌詞があったということを最近知りました。アニマルズの歌詞では「刑務所」になっているのですが、その歌詞もいくつかあるうちの一つに過ぎないそうで、米国でも「売春宿」として作詞されていた歌もあったそうです。このように書いてしまいますと浅川マキさんの天才ぶりが少しばかり落ちてしまいそうですが、元々売春宿とした歌詞にあったにせよ、やはり素晴らしい訳詞です。
実は、歌詞自体はとても短いのですが、それを5分という長さにして、しかも全く飽きさせないのは“ちあきなおみ”さんの歌唱力にほかならないと思っています。“ちあきなおみ”さんはデビュー当時はどちらかと言いますと、実力派というよりもお色気路線でヒットを飛ばしていた方です。しかし、次第に実力を見せるようになり、いつの間にか自分のジャンルというものを作っていったように思います。
“ちあきなおみ”さんで最も有名なのは「喝采」という名曲ですが、この歌はレコード大賞まで獲得しています。実は、僕の亡くなったお母ちゃんは晩御飯のあと洗い物をしているときによく「喝采」を口ずさんでいました。ですので、僕は“ちあきなおみ”さんといいますと、いつもお母ちゃんを思い出します。
女郎屋で思い出すのは僕が20代後半の頃に、深夜にやっていた映画です。詳細は全く憶えていないのですが、まだうら若き女性が人生に翻弄されながらも売春宿でたくましく生きていく物語でした。日本の映画では、日本が戦争で負けたあと突然宣戦布告して侵攻してきたソ連軍に支配された地域での出来事を描いた「赤い月」が思い出されます。
ソ連兵の傍若無人な振る舞いに困っていた日本村の村長さんは日本の女性たちをソ連兵の性暴力から守るために売春宿の設置を思い立つのですが、問題はそこで働く女性たちの確保でした。そのときに自ら名乗り出たのが元々性産業で働いていた女性たちなのですが、その役を木村佳乃さんが演じていました。以来、僕は木村さんのファンになっています。
話は逸れますが、世の中というのは本当にズルい人たちがいるもので、自らが犠牲になって一般の女性たちを守った売春宿で働いていた女性たちは帰国後はみんなから労われるどころか非難の目で見られることになります。こんな不条理が許されるでしょうか。かわいそうなことに、そうした目に遭った方々は結局白い目で見られながら人生を終えているそうです。
というドキュメントを最近なにかで観たのですが、僕は悲しくなりました。そうした日本人の風土にです。自らを犠牲にしてほかの人を守るために尽くした人が損をするような世の中にならないことを願って今週は終えることとします。
それでは、さよならさよなら。